新しいシステムはデータをきれいにしてくれません。汚れたデータがより速く広がり、より直しにくくなるだけです。誤りが帳票と伝票の中に入ってしまうからです。データ整理は稼働開始前に終わらせる作業であり、以下は多くの導入現場で有効だった七つの手順です。
手順1 — 原本を決める
データの種類ごとに、正しいとみなす出所をひとつだけ決めます。取引先マスタはどこから、従業員名簿はどこから、在庫数はどこから。当たり前に見えて、最も飛ばされやすい手順です。そしてここを飛ばすと、後続の作業をすべてやり直すことになります。
短い表を書いてください。データの種類 — 出所 — 責任者。この表は、後の権限設計の土台にもなります。
手順2 — コード体系を確定する
取引先コード、商品コード、案件コードは、取り込み前に統一した規則を決めます。実務的な原則です。
- 変わりうる情報をコードに含めない。地域名を含むコードは、取引先が移転した瞬間に誤りになります。
- 桁数を固定し、数字と文字で紛らわしい記号を使わない。
- 取引終了した対象のコードを再利用しない。履歴が混ざります。
手順3 — 重複を統合する
重複は、検索せずに新規作成してしまうことから生まれます。対処は次のとおりです。
- 最も変わりにくい項目で突き合わせる。納税者番号、電話番号、メールアドレス。名称では突き合わせません。
- 統合時は取引履歴が最も長いレコードを残し、他のレコードの取引をそちらへ移します。
- 「旧コード — 新コード」の対応表を残す。半年後に必ず誰かが尋ね、誰も覚えていません。
手順4 — 書式を揃える
日付、電話番号、単位、通貨、固有名詞の表記。実務で特に厄介なのは次の三つです。
- 単位:ケース、箱、個。換算係数を明示しないと、在庫は永遠に合いません。
- 通貨と為替レート:換算後の金額だけでなく、原通貨の金額と適用レートを保存します。
- 余分な空白と不可視文字:表計算由来のデータで起きる、自動突合が「不一致」と報告する典型的な原因です。
手順5 — 履歴をどこまで持つか決める
すべての履歴を移す価値があるわけではありません。妥当な区分は次のとおりです。
- 期首残高と未完了データ(債権債務、未納品の注文、有効な契約):必須。完全に一致させます。
- 直近の取引履歴:前年同期比の帳票が必要なら移行します。
- それ以前の履歴:旧システムを参照専用で残すか、書庫として書き出します。全期間を新システムに押し込むのは、得られる価値より費用が上回るのが普通です。
手順6 — 試行と突合
検証環境に取り込み、旧システムと三種類の数字を突き合わせます。件数、金額合計、そして無作為抽出した明細の項目単位の確認です。ずれたら移行スクリプトを直し、最初からやり直します。取り込み済みデータを手で直してはいけません。本番実行でその修正はすべて失われます。
原則:整理の作業はすべてスクリプトで再現できること。手作業は一度きりですが、データ移行は必ず二回以上行います。
手順7 — 凍結と切り替え
稼働開始前に凍結時点を決めます。その時刻以降、旧システムへの入力は誰も行いません。最終の移行を実行し、もう一度突合し、新システムを開きます。凍結の時間帯は週末か取引の少ない時期に置き、全部署へ事前に通知します。
稼働開始後
旧システムは参照専用でしばらく残します。見解が割れたときに確認できる期間が必要です。同時に、再び汚れないための規則を入れてください。新規作成の前に検索を強制する、保存時に重複を検査する、マスタの編集権限をひとりに限定する。データ整理は一度の作業ですが、清潔に保つのは終わりのない作業です。




