EUのAI法(EU AI Act)はよく話題になりますが、期日はしばしば誤って伝えられます。とくに「2026年8月からすべての高リスクAIシステムが適合しなければならない」という言い方です。本稿では公式の施行スケジュールと照合し、ベトナムのソフトウェア企業に実際に関係する部分を整理します。
公式スケジュール上の期日
- 2026年8月2日 — 第50条(2)に基づく、AI生成コンテンツの透明性義務。合成コンテンツは機械可読な形で表示する必要があります。高リスク全般の期限と取り違えられやすいのがこの日付です。
- 2027年12月2日 — 第6条(2)および附属書IIIに該当する高リスクシステムに、第III章の要件が適用されます(採用、教育、信用評価、重要インフラなど)。
- 2028年8月2日 — 第6条(1)および附属書Iに該当する高リスクシステム、すなわち既存の製品安全規制の対象製品に組み込まれたAIに同要件が適用されます。
- 2030年8月2日 — 公的機関が利用する高リスクシステムは、この日までに適合を完了している必要があります。
つまり、2026年に迫っているのは透明性の話であり、高リスクシステムの重い義務は2027年末と2028年に来ます。
欧州にいなくても影響を受ける場合
この法律は、システムが市場に出される場所または使用される場所を基準に適用され、企業の所在地では判断されません。ベトナムのソフトウェア企業でよくあるのは次の三つです。
- 欧州の顧客向けの受託開発。一次的な義務は顧客側にありますが、その義務は契約を通じて流れてきます。技術文書、学習データ、ログ、リスク評価などです。
- AI機能を持つSaaSを欧州の利用者へ販売する場合。法律上の「提供者」が自社になり得ます。
- 採用やスコアリング機能へのAI組み込み。附属書IIIに属し、最も厳しく見られる領域です。
期日に関係なく進められる準備
期限が2027年でも2028年でも、次の四つは積み上げに時間がかかり、直前には用意できないため早く始める価値があります。
- データの出所を記録する。学習・調整に使ったデータの入手元と利用許諾。後からの再構成が最も難しい項目です。
- 運用ログ。ひとつの判断を再現できるだけの記録が必要です。入力、モデルのバージョン、出力、人の介入。
- 人の関与。採用や与信など実在の人に影響する判断には、人が確認する地点を設け、その痕跡を残します。
- AI生成コンテンツの表示。2026年の期日に当たる項目であり、一覧の中で最も安価に対応できます。
報道を読むときの注意
期限の延期をめぐる働きかけと議論が繰り返されてきたため、まとめ記事どうしで日付が食い違うことがよくあります。安全なやり方は、計画に日付を入れる前に公式の参照スケジュールと突き合わせ、社内文書に「いつ時点で確認した日付か」を明記することです。
ベトナムの多くの企業にとって、この法律を読む実際的な価値は、すぐに適合することではなく、今年契約する欧州顧客が持ち込む要求水準を理解しておくことにあります。
参考資料
- EU Artificial Intelligence Act — Implementation Timeline
- EU Artificial Intelligence Act — High-level summary
期日は2026年9月24日時点でartificialintelligenceact.euと照合したものです。本稿は法的助言ではありません。




