.NET 10 LTS — 管理システムで採用する価値のある変更

2028年11月までサポートされるLTS版。パスキー、EF Coreのjson型とvector型、LINQのLeftJoin、Arm64の性能改善、そして安全な更新手順。

.NET 10 LTS — 管理システムで採用する価値のある変更

.NET 10は2025年11月11日に長期サポート(LTS)版として公開され、2028年11月10日まで3年間サポートされます。.NET 8で管理システムを運用しているチームにとって実務上の問いは「何が新しいか」ではなく「何のために上げるのか、いつ上げるのか」です。本稿では、企業向け管理ソフトウェアに実際に効く変更を取り上げます。

LTSの区切りに注目する理由

ひとつ前のLTSは.NET 8でした。LTS版にはいずれもサポート終了日があり、その後はセキュリティ修正が届きません。何年も動き続ける管理システムでは、バージョン更新は計画的な定期作業にしておくべきで、セキュリティ部門に指摘されてから慌てる性質のものではありません。

採用する価値のある四つの変更

1. パスキーによるパスワードなしのログイン

ASP.NET Core 10はWeb Authentication(パスキー)に対応しました。社内システムでは、共用パスワードをなくし、認証情報の漏えいを減らす最短の道です。漏えいは侵入原因の少なくない割合を占めます。Windows Hello対応のPCや生体認証付きのスマートフォンが既にあるなら、利用者が新しく覚えることはほとんどありません。

2. EF Coreがjson型とvector型に対応

EF Core 10はデータベース標準のjson型をLINQと共に扱え、AI向けにSQL Server 2025のvector型にも対応します。json型はERPでおなじみの課題を解きます。顧客ごとの拡張項目を、テーブルを増やさずに持つ方法です。vector型は、別システムを立てずに業務データベース内で意味検索を行う道を開きます。

3. LeftJoinとRightJoinがLINQ演算子に

小さく聞こえて出番の多い変更です。これまでLINQで左外部結合を書くにはGroupJoinとSelectManyとDefaultIfEmptyの組み合わせが必要で、長く、読みにくく、誤りやすいものでした。今は専用の演算子があります。左外部結合が頻出する管理帳票では、コードの読みやすさが目に見えて変わります。

4. 実行時性能

JITコンパイラの改善(インライン化、仮想呼び出しの解決)、IntelとArm64の新しい命令セット対応、そしてArm64におけるwrite-barrierの改良でガベージコレクションの停止時間が約8〜20%短縮されました。クラウドで費用面から採用が増えているArmサーバーで動かしているなら、この部分は効きます。

後回しでよいもの

OpenAPI 3.1、YAML形式の仕様出力、入れ子オブジェクトの検証改善、メモリプールの自動解放によるメモリ使用量の低減。いずれも良い変更ですが、更新時期を前倒しする理由にはなりません。

安全に上げる手順

  • 一行も直す前に破壊的変更の一覧を読む。更新作業の大半はバージョン番号ではなく、追随していない外部ライブラリに費やされます。
  • 基盤が先、機能が後。プラットフォームのバージョンだけを変え、新機能を含まないリリースを一度出します。不具合が出たとき原因の切り分けができます。
  • 前後で測る。重い操作の応答時間を事前に記録しておけば、性能の変化が実測か印象かを判断できます。
  • データベース周りを最も厚く試験する。EF Coreはバージョンごとに生成される問い合わせが微妙に変わります。更新後に問題が出るのはたいていここです。

参考資料

機能の内容はMicrosoftの公式リリース告知に基づき、優先度の評価は企業向け管理システムの特性を踏まえたNinePlusの見解です。

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